氷川清話 (講談社学術文庫):アマゾンより抜粋、NHK大河ドラマ「篤姫」を見ていて、北大路欣也演ずる勝海舟にものすごく惹かれていました。特に、江戸城無血開城に至るシーン。後日、雑誌の特集で、勝海舟の人物像に触れ、益々、勝海舟について書かれた本が読みたくなり、選んだのがこの本です。これは、明治の世を30年余(日清戦争が終わり、三国干渉を過ぎた頃まで)生きた晩年の勝海舟への、新聞記者のインタビュー記事をまとめたものです。口語体で非常に読みやすく、勝海舟の生の言葉を聞ける貴重な本でした。 勝海舟の偉大さを改めて感じました。 何が大事で何が小事かを、大きな視野で見分けることのできる人でした。そしてその軸が決してぶれない人でした。 江戸の百五十万人の命を救うことが大事で、幕府内で厳しい批判にさらされても、武士らしい死に様だとか自分の名誉などは小事でした。その上で、感情的にならず、じっと耐え抜く非常に強い胆力を持った人でした。 彼は繰り返し、至誠と胆力こそが重要で、それは自分を鍛え抜くことからしか生まれないと述べています。 こう書くと、ひどく真面目な印象になってしまいますが、彼の言葉は、ユーモア溢れ皮肉も効いていて、とても人間臭さを感じます。内に秘めたものは凄いけど、真っ向からぶつかるばかりでなく、かわすのもうまい人だったと思います。 彼は、時局が悪い時は、“押す”のをやめて、畳に寝転がって待つことも重要だとも出ています。事実、彼は江戸幕府でたびたび冷や飯を食わされていて、事実、畳に寝転がって毎日過ごしていたこともあったようです。私のような凡人にとっては、時期を待つというのが軸をぶらさないための見習うべきコツなのかもしれないと思いました。 この本を読んでいると、実に含蓄深いことを読み取ることができます。 本を読んでいると、日本が欧米列強に国土を乗っ取られる危機にあったことをひしひしと感じます。一番怖かったのは、日本の内部分裂による疲弊だったのでした。まさに江戸が倒幕軍と幕府軍の衝突によって焼け野が原になることこそ、欧米列強の思うつぼだったのでした。そんな危険を察知し、未然に防いだのが、勝であり西郷だったことがわかります。彼らのような器の大きい男が現れて、日本は幸運でした。 勝ち戦であった日清戦争に対し、勝海舟は反戦論者でした。単なる平和理想主義者ではなく、戦争によって日本が、経済的に泥沼にはまっていくことが致命的だと予見している点が重要です。 最後に、明治維新の頃を振り返る勝海舟の言葉から、「命懸け」ということが文字通り「命懸け」だったことが伝わってきます。現代を生きる我が身を振り返り、やはり人間、どこまで自分の仕事に命懸けで夢を注げるかに人生の価値が懸かっているなと改めて思いました。 お勧めの本です。
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